【代表メッセージ】「編集」という力で、想像もできない価値を生み出していく。

2017.02.13

バンクトゥという社名の由来は「土手」です。

川辺の防波堤や、土砂崩れを防ぐために設置された土手。この傾斜した坂のことを、スケートボードやBMXなどのストリートカルチャーでは”バンク”と呼び、ジャンプ台になり、ときにグラフィティのキャンバスにもなります。

世間一般の人から見ると、単なるコンクリートの塊ですが、ものの見方を変えたり、前提となってる常識を疑えば、これまで誰も想像できなかった価値を生み出したり、あるいは楽しむことさえできたりする。私たちはこうした考え方と編集やデザインという道具をもって、世の中の「当たり前」を変えていく。

少し偉そうですが、これがバンクトゥのスタッフがめざす使命であり、仕事の姿勢でもあります。

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越境する編集力

「今ほど”編集”という職能が注目されている時代はないんじゃないか」と、日々、実感しています。

これからお話しする編集とは、私にとってはデザインの仕事も含みます。あらゆるコトやモノ、そして体験に適用できる「課題発見」「問題解決」の道具として編集という職能を捉えています。

弊社は5期目を迎えていますが、この間に業務の幅を大きく広げてきました。もとは紙媒体の編集者が集い設立した会社なのですが、時勢に合わせて、出版関連事業以外のメディアにも積極的に投資を行い、事業化してきました。ニュースメディア、ソーシャルメディアなどを介したデジタル領域でのコンテンツ・クリエイション、さらにパッケージデザインやイベントマーケティングなどを取り扱うサービスの領域が広がり、成長してきました。

出力するメディアの幅が、紙からWeb、さらにリアルな場へと伸展しただけではなく、クライアントの経営やメディアの戦略に直結する総合的なコンテンツプランニングを任せていただく機会も増えています。いわゆる”川下”から”川上”の仕事へ、よりプロジェクトの源流へと登り、大元の問題を調査や解決していくような仕事を求められています。どれだけ川下で丁寧にがんばっていても、そもそも川の流れの行き着く先を読み間違えていたのならば、そのプロジェクトは成果が出ません。どのような案件でも、なるべく上流を観察できるポジションを探るようにしています。

といっても、川上の仕事だけを大事にする、というのも問題です。むしろ、川下の仕事できちんと信頼を得られる成果を出さないといけない。どれだけ綿密に戦略を練ったとしても、最終的に受け手との接点となるクリエティブのコントロールができなければ、それまでの上流の工程はすべて無に帰すと思います。

編集者は、情報の発信者とその受け手、代理店とクリエイター、営業と制作など、あらゆる利害関係のちょうど真ん中に位置して、対岸どうしを結ぶ”舟渡し”の役割を担います。そのとき、川上についても川下についても、きちんと把握している船頭であれば、話は早い。

多様なメディアを編集することにこだわってきたのも、同様の理由からです。情報の受け手にとって、紙であるかWebであるかといった違いは、一級河川か二級河川かぐらいのわずかな差異に過ぎないと感じています。多くの人は、川そのものよりも、流れてくるモノ、つまりコンテンツそのものに関心があり、それを最適な水流にのせて届けることがなによりも大事だと考えています。

船を安全かつ効率的に導く水先案内人は、精通した区域が広いほど職務を行える海域が広がります。メディアという情報の海を縦横無尽に越境する編集力が、プロの職能として問われていると考えています。

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なぜ、いま「編集」なのか?

紙からWeb、さらにリアルの場づくりまで……変化の激しいなかでも、一貫して言い続けているのは、バンクトゥは”編集の会社"であるということです。その一点に関しては、メディアを問わず、職人的であることを追求しています。

しかし、編集という行為は、日常的に誰もがしていることだと思います。Webやテレビなどのメディアはもちろん、目にする光景や耳に入ってくる音……世間にイヤというほど溢れている情報のすべてを一人の人間が受け取ることはできません。自分に必要な情報を選択したり、ときには無意識に拒絶したり。それはまさに編集作業そのものです。

いま、世の中の情報量が爆発的に膨れ上がり、社会がとても複雑化しました。受け手の側から能動的に情報を取りにいく機会が減り、情報の側からやって来ては、頭に滞留することなく、すぐに流れていく。すきま時間があればスマホでアプリを起動し、情報を得る習慣が身につきましたが、「そもそもどういう情報を欲していたのか」ということは本人さえ分かっていないケースが多いような気がします。一方で、「検索」という能動的に情報を取りにいく文化も根付きました。このように千変万化する環境下にいる消費者と、どのように接点をつくるのか、本当に難しい時代になったと思います。

こうした時勢を受け、「課題発見力」や「問題解決力」をもつクリエイティブの力が見直されていますし、編集という職能は、まさにこの点において力を発揮します。精度の高いリサーチやビジュアライズを通じて価値を「可視化」したり、ものごとに情報のプライオリティや強弱をつけて「構造化」したり、良質な言語によるコミュニケーションを通じて「物語化」したり……。誰もが自然と行っている編集という作業を、どの精度で、どう意識的に行うのか。それにより最終的にできあがってくるモノのクオリティがはっきりと違ってきます。この一連の作業に確実性や再現性を有するプロの編集者が、いまの社会情勢を受けて価値を増してきているのは、ごく自然なことではないでしょうか。

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バンクトゥの定義する「編集」とは何か?

編集というスキルに注目が集まる一方で、キュレーションメディアやSNSの登場により、誰もが気軽に情報を発信できるようになった今、編集という業務の輪郭が希薄になりつつあると思います。編集を生業とする弊社にとっても「プロの編集」を、どのように定義するのかが問われていると考えています。

多様な業務領域をもつこの職能を、一言で表すのは難しいのですが、『週刊少年ジャンプ』の黄金期を築いた編集者の鳥嶋和彦さんは「マネージャー」「ディレクター」「プロデューサー」の3つの側面から、編集者の役割を定義されています。この住み分け方は、バンクトゥが求める編集の考え方にとても近く、私自身の言葉としては以下のように、それぞれの職能を解釈しています。

1  マネージャー=「人に依頼し、モノを集めること」
編集という字は、かつて「編輯」とも書かれていました。”輯”というの字の構成要素は、人やモノを集めて運ぶ「車へん」に「口」と「耳」。情報を集めるという作業工程に、自らの口と耳で見聞や対話することが含まれるのは理解しやすいのですが、注目したいのは「車へん」です。”人"を乗せるための「車」という字が使われているのは、本来、集めて編むべき対象は、情報や原稿といったコンテンツ以上に、それを生み出す”人"であるからでしょう。

編集者は決して、一日中デスクやパソコンの前にいて、程よく原稿や素材を集めて編むのが仕事ではない。いま、キュレーションメディアの問題が問われていますが、そこで使われる「編集」という言葉には、まさに人に依頼することやその敬意が欠けています。もちろん、口と耳をもって対話を深めることもない。「輯」という字体の変質は、いま喪われつつある編集の、本来の職能を象徴しているように思います。私たちは、ここをおろそかにしない”編輯者"でありたいのです。

2  ディレクター=「始点と終点をつくること」
「編集的ではないもの」を考えることで、その輪郭をより明確にすることができると思います。たとえば、トランプのような散漫な紙の束に、なんの脈絡もなく情報が書かれた状態を想像してみてください。それは「集めない」「編まない」わけですから、始点(はじまり)と終点(終わり)が存在しない状態なのだと思います。逆に書籍は、表紙(始点)と裏表紙(終点)があることで、読む方向や情報を得る順序が自然と発生する。つまり、2点の存在によりライン(線)という概念が生まれ、無意識下に”方向性”や”推進力"が生まれます。

これはページのレイアウトにおける動線設計にもいえますし、もっと大きな見方をすると、あるプロジェクト全体のスタートとゴールを明確にすることともいえます。物理的なものにも、時間的なものにも、始点と終点を”決める”ことで「方向・方角」が生まれる。この2点を打つ決定権をもち、目指す方向の指揮をとること、それがディレクションなのだと思っています。

3  プロデューサー=「時代の機微を捉えること」
「プロデュース」という言葉を辞書で引くと「生活に必要な物資などをつくりだすこと」とあります。編集が取り扱う”情報”という品物は、当然、食べることも着ることもできません。根本的には無くても生きていけるわけですが、それをどう「生活に必要な物資」として「つくりだす」かが、問われているのだと考えています。

では、どのように他者の共感を得られるコンテンツをつくるのか。それは、編集者が一個人として、日々の暮らしや活動のなかで磨いた感性から、時流の機微を嗅ぎ分けることで生み出せると思います。論理やデータ先行での発想ではなく、まずは自身の体験や見聞から”仮説"として未来のビジョンを創造する工程が重要です。そうでないと、机上の空論や前例主義に陥り、人の感情を動かすような"新しい選択肢"を提示することはできないでしょう。最初に仮説ありきで、論理やデータをもって客観的に考え、さらに仮説を再構築していく必要があります。

そのためには、より根源的な雑学・雑読の習慣が問われますし、自分の感性を素直に信じる勇気もいります。その視点の高さや度量の深さが、プロデュースできるフィールドの面積に繋がると考えています。

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多様性ある”個”の成長

これまでお仕事の依頼や期待をしてくださった方々の多くは、弊社の編集力からなる「コンテンツの質」に価値を感じてくださいました。

コンテンツの質を高めるには、いくつかの方程式やテクニックがありますが、根本的には「個人技」に依存すると考えています。この問題にどう取り組み、知識体系として整理し、組織として汎用性を高めていくかは、今後、長期間にわたって取り組む弊社の課題です。一方で、属人化した能力であるという考えをいかに意識的に認め、とことん個人に向き合って成長を見守るか、という覚悟も必要だと思っています。これを認めることで、個の力が均質化しない”多様性のある組織”ができると考えています。

編集的思考から考えると、似た者同士が集まり、”他者性"の低いチームはとても危ういと思います。編集者は、著者やクリエイターの傍に立ち、第三者として意見するからこそ、対象の価値を客観的に発見できる。別の選択肢を与えたり、新しい視点を与える必要があるのです。だから、同質の考えをもつ人が集まることに、"編集の会社"としては価値を見出しづらい。今後も、良い意味で居心地の悪さを与えてくれる人を仲間にしたいし、なにより古参新参を問わず意見を言い合える風土を大切にしていきたいです。

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個の力を認める一方で、私たちが”チーム”にこだわる理由は、多様性以外に、「バリューム」という言葉で重視しています。ボリューム(規模の大きさ)は、バリュー(価値)になるということ。いまの時代、規模に頼ったかつてのプロダクション的なビジネスモデルが立ち行かなくなりつつあるのは事実ですが、一方で、個の力だけではスピードや物量に限界があります。個人では土俵の上に立つことさえできない仕事もあるし、大きな目標にはチームで取り組まないとゴールにたどり着けない。それは、成長の機会損失だと考えています。

属人的な個の成長に軸を置きながら、因襲的なプロダクション思考に陥らず、外部パートナーも含めて最適なプロジェクトチームをつくる。個人の職人芸とチームとしての価値を天秤にかけながら、そのバランスを模索していきたいと考えています。

では、どう実現するのか。それは、メンバー各々の本当にやりたいことを尊重しながら、経営者がリスクをとって学びの機会を聞き入れていくことだと考えています。弊社では、他企業へのインターン、セミナー等への参加費の全額負担、副業など、自社の目先の利益を度外視した取り組みを積極的に奨励してきました。それも経営からの押し付けではなく、本人たちの意欲が起点となってはじめたものばかりです。

投資的な考えもありますが、それ以上に、弊社の存続価値のひとつである”メンバーの人間的な成長"に対する想いが強いです。営利的な観点から見れば、甘い部分があるのも自認していますが、弊社とってのお金の位置付けは、人間の生命活動でいうところの「酸素」みたいなもの。酸素を吸う目的で毎日を生きている人は少ないと思いますし、そんな人生は貧しい。金銭は、あくまで企業の生命活動を行うためのものに過ぎず、個人の成長のなかにこそ、弊社の”生きがい”を感じています。

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編集とデジタルテクノロジー

“編集”という表現に対して、どうしてもアナログなイメージを拭えないと思うのですが、クリエイティブとデジタルテクノロジーを切り離しては考えらない時代において、デジタルとアナログを越境した職能として編集を捉え直すことが大切だと考えています。

そのため弊社では、デジタルテクノロジーに対しての投資を積極的に行ってきました。

昨年は、IoTに対する見識を深めるために画像処理・画像センシング技術を得意とするソフトウェア企業とともにデジタルサイネージ・ジャパンに出展。現在はマーケティング・オートメーション(MA)に積極的な投資を行い、このノウハウの基盤を社内でナレッジ化しようと考え、すでに実働の段階に入っています。弊社が、出版業務の請負のイメージが強い「編集プロダクション」という呼び方に抵抗をもつのは、こうした理由からです。

いま、“編集の会社”として、主に3つの視点でデジタルテクノロジーに向き合う必要があると感じています。

1つは、仕事の効率化およびコスト面から。コンピューターが得意なことは任せ、人間が本来成すべき作業を行う。よりコンテンツそのものと向き合う時間を増やしたいです。現在、AIの実用化が進んでいますが、将来みすえているのは、編集という職能の人工知能化。すでにマイナーリーグで採用されている「Wordsmith」のような高度な自然言語生成技術などを、編集という仕事のサポートに活かしたいと考えています。

1つは、多様化する消費者とのタッチポイントの分析とアプローチのため。膨れ上がる情報量に対して、いかに効率的に情報を届けるのか。テクノロジーが羅針盤の役割を担ってくれる時代です。編集者がデータ解析ツールを駆使して効果測定をしたり、市場動向を数字という共通言語で理解したりすることは、いま最も大切なプロセスのひとつになりました。

1つは、クリエイティブへの活用。データやプログラムを活用してロボットに絵を描かせたり、リアルな場でインタラクティブな体験を演出したり、この分野での発想はまだまだ未知に富み、コンテンツとして開拓できる可能性を強く感じています。テクノロジーの側から逆算して、表現そのものにどう融合していくか、という視点をもつことも大事だと考えています。

周知のとおり、これまで疑いようもなかった既成概念をデジタルテクノロジーが、どんどん変えています。メディアのあり方や、世界のルールを変える力をもち、恐ろしいほどに刺激的な進化を日々目撃しているように思います。

でも、とびきり有能なペンタブレットや描画アプリケーションがあったとしても、そもそも絵がうまく描けない人は、そのテクノロジーを使いこなすことはできないわけです。光や影を正確に捉える観察力や、3Dの世界を2次元に定着させるデッサン力が必要になります。あくまでもデジタルテクノロジーに求めるのは、効率や分析、サポートであり、人間の技能がすべての起点になることは変わらない。むしろ、デジタルテクノロジーの進歩にあわせて、人間本来の価値がより増してくる時代であると考えています。

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バンクトゥのこれから

働く場所、その地域に根ざしていくことを重視しています。ニュース性の高い即時的に消費されるコンテンツではなく、堆積した情報を読み解くことで価値を生むこともあります。街医者のように、その地域に長く寄り添った編集者だからこそ発見できるコンテンツもあると考えています。地域に生きる人や地元の企業をそばで診ながら、その活動の文脈を理解し、わずかな変化を汲み取ることを大切にしていきたいです。

クリエイティブの力、つまり”創造”というと、どうしてもオリジナルを考え、新しいものを生み出すことにスポットが当たりがちですが、古いものを見直したり、当たり前になって見過ごしているものを捉え直したりすることも、十分に”創造”だと考えています。むしろ、日常にころがっている価値を見つけることの方が難しい。

地域と長く濃密な関係性を維持するには、逆説的ですが、その外に立って眺める視点が必要だと考えいてます。良い意味で”よそ者”の新鮮な視点で、ものごとを見ることにより、眠っているコンテンツを掘り起こすことができるはずです。これまでも京都以外に軸をおく方々とビジネスをしてきましたが、将来的には自分たちで二拠点以上の街場感をもって組織を築くことで、この問題を解消していきたいです。

また、自分たちの生活の基盤となる地域に対して、編集という技術をどう還元していくのか。単なるメディアの制作やビジネスのサポートに終わらず、たとえば地域の若者や子どもに向け、編集や文章能力のスキルを提供していきたいと考えています。出版社の7割が東京に集中し、編集という職能が大都市に縛られていた時代は、インターネットの普及によってやや緩和しつつあると思いますが、まだまだ情報の格差や教育機会に偏りがあるのは事実。願わくば、編集という観点から地域の活動を見守ったり、ローカルにいながら質の高いメディアをつくれたりするような、そんな人財の育成に関わっていきたいと考えています。

私個人としてやり遂げたいことは、おこがましいですが、編集の文化を編集すること。これまで先人が築きあげてきた編集技法や編集論を、時代に合わせて再構築し、さらに専門職だけではなく、一般の方も取り入れられるような平易なものとしてまとめあげたいと考えています。

それは、冒頭で述べたとおり「”編集”という職能が注目されている時代」であり、社会の要請を受けてだと考えています。この時代がぶつかっている大きな問いに対して、課題発見や問題解決のツールとして、編集という力が社会の役に立てるものだと信じているからです。

「既知を未知化する、編集という力。」

私たちは、編集やデザインという道具をもって、世の中の「当たり前」を変え、想像もできなかった価値を生み出していきたいと考えています。

合同会社バンクトゥ代表
光川 貴浩
 

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